川の深さは

by福井晴敏、読み終わりました。
前に日記に書いた「自分とほぼ同世代の作家」が書いた本であることを実感し、何よりその「感じ方」が自分で面白かったです。
加筆訂正でどの程度文章が直され、足され引かれたのか分かりませんが、おそらくは登場人物の思考に託した作者の思想は変わって無いでしょう。その思考に「同世代」を感じ、共感したり「うわ、わざわざ言わなくても…」という自分の青さの鏡を見せつけられたり「それはどうかな…」と同年代の友人に言われた事に反発するような気持ちを持ったり…

うーん、読んだ直後だとなんか、文体、ちょっとだけど影響受けるネ(文節自体が長く、句読点の「、」でさらに長く繋げる文体。でも悪く無い。読み心地は良い。俺には)

非常に映像的な文章だという点も興味深かったです。
頭の中で「こういう構図やシチュエーションを想定して書いているのだろう」と具体的な映像を想像して読んでいると、大概裏打ちされました。ほぼピタリ。これは巧みな文章力なのか同世代が為せる技?
近年の押井守作品の映像がぽろぽろ浮かんだりもしました。

日本のフィクションはこれから押し並べて「ジャンルX」な方向に向かうということでしょうか。

テーマについても…やはり「同世代だ」という感じで、俺が何か書いても自分の主観が入り込み過ぎるので特に書きませんが。
登場人物像に込めた思い(思想ではなく)、多々共感できます。
ただ、主人公の年令を作者自身より上に設定するのは、新人賞応募作品としては大冒険だったなー無茶だよなあと思いました。

おそらくは、他の作品も同じ視点で貫かれているだろう福井小説。とりあえず少し間を置いて、また別の作品を読んでみたいです。
まずは先日買った山田正紀とクリスチアナ・ブランドを読まねば。