山と渓谷

というわけで雑誌『山と渓谷』11月号の特集は
「単独行と加藤文太郎
です。

必読だヨ!
写真も良いし(いつものことだけど、いつも良い写真が載っているってやはりスゴイことだヨね)

加藤文太郎って誰?というあなたにうってつけ。
そんなあなた!個人的には新田次郎孤高の人』を読んで「加藤文太郎」という人物のイメージが出来てしまう前に読んで欲しいです。
いや、興味があればどれをどんな順番で読んでも良いのですが。

…以前から考えているのだけど「事実と実在の人物をモデルにした小説」を読んで、それをどのように受け取り、理解するかというコトが、たとえば「情報」というモノをどのように理解、評価するかということを学ぶ上で重要なコトなのだと思うのです。

現実を、時間の連続から切り取れば虚構となり、視点を変えて見ることによって生まれるある種の「偏向」も現実の一部である、というか。

例えば吉村昭歴史小説郡を読んで、それをどうとらえるか?というのは前にも書いた『ニュージャーナリズム』をどうとらえるか?ということにもつながるし、
「事実、現実、虚構、幻想」
を個人の中でどう処理するかということにも…

話がそれたけど、谷甲州も寄稿し、写真も満載。
すごいヨー谷甲州のカラーグラビアってそれだけでなンか凄い(笑)
(やはり長袖シャツはかたくなにダンガリーonlyなのネ)

え?谷甲州『白き峰の男』読んだことないですって?

読んで下さい。


でも今回の『山と渓谷』を読んで一番「おお」と思ったのは、加藤文太郎著『単独行』からの引用でした。

「かくの如く単独行者は夏の山から春-秋、冬へと
一歩一歩確実に足場をふみかためて進み、いささかの飛躍をもなさない。
故に飛躍のともなわないところの「単独行」こそ最も危険が少ないといえるのではないか。」
加藤文太郎著『単独行』山と渓谷社刊より、雑誌『山と渓谷』2004年11月号P31に抜粋された文章よりさらに抜粋)

これは実は壮絶な「論理のアクロバット」です。
一般的には遭難時にリスクの高く、危険と見なされる単独行こそがもっとも安全であるという思想。
「飛躍をなさない」「飛躍のともなわない」という言葉から受ける印象が、まずネガティブであることを踏まえ、それをポジティブな意味であるかのごとく印象を反転させる加藤の知性(というか文才)も素晴らしいですが。

閑話休題
こうした単独行の哲学を踏まえた人物が谷甲州『惑星CB-8越冬隊』(先頃復刻!)や『白き峰の男』に登場します。
「ひとりであれば何がおきても個人の判断を即座に行動に移せるが、人数が増えれば個人単位での自由は制限され、対処の柔軟性が失われる。ゆえに危険な地帯の走破は個人の方が望ましい」
という思想の人物が登場するのです)

そして『単独行』はまだ読んでないのです。
読まなきゃ。